97話  忘年会


 イトウの会の忘年会を2007年は12月19日に開催した。私にとっては、7つ目の忘年会であった。幹事の大村が準備を整え、ことしは居酒屋でんすけでやることになった。かつて矢口高雄先生とえんえんと夜更けまでイトウ談義を交わし、本波幸一プロやチライさんとも熱いイトウ話をしたおなじみの酒場である。

忘年会とは、組織あるいは仲間が集まって、酒を酌み交わしながらその年の成果や業績を讃えあげ、失敗も苦労も飲み干してチャラにしてしまおうという交友の会なのである。年が明けたくらいで、組織の実情がそう変わるわけではないのだが、とりあえず年末で〆て、また来年頑張りましょうというきわめて楽天的な宴会であるのがいい。

 仕事を終えて、でんすけに一番乗りしたのは例によって私である。約束の時間より30分も前に来るのだから、誰もいない。予約済みであるから、すでに寄せ鍋の用意ができている。店内に心地よく流れるモダンジャズを聴いていると、ふたり目がやってきた。ホームページゲストの稚内石岡さんだ。

 「先にいっぱいやりましょう」

 というわけで、生ビールを注文し、乾杯したところに後続部隊が続々と現れた。加藤、谷、大村、川村、初登場の佐藤である。以前ならここで打ち止めなのだが、今回はさいごにとっておきの紅一点が登場することになった。

 「仕事で10分遅れます」との律儀な電話をすでにもらっていた。そのとおり、彼女が現れた。すらりと細身の若い美女Kさんである。

 イトウの会の職場は、病院であるから、圧倒的に女性の多い女の職場である。女性の会員がいてもちっともおかしくないのだが、ひとりもいない。そこで、会長の私が業を煮やして外部の若い女性に呼びかけ、とりあえず忘年会に勧誘したのだ。これにはイトウの会のおじさんたちも大喜びして、会長の面目を大いにほどこした。

お通し、刺身、オードブルを食べ尽くし、鍋がグツグツ煮えるころには、ことしのイトウ釣果に話が弾み、一匹も釣っていない会員には「なにやってたの?」と檄が飛んだ。私はビールから焼酎・黒丸のロックにとりかかった。これで急速に血中アルコール濃度が上昇する。

 ゲストの稚内石岡さんは、2007年は23匹のイトウを釣り、最大魚は87pだったという。前年は78pがベストだったので、着実に自己記録を更新して、もはやイトウ釣りから足を洗えないほどどっぷりと浸かってしまったようだ。彼は仕事の関係で、平日に休暇が取れるので、ライバルのいない川で悠々と竿をふり、釣果をあげることができる。ヤマメ釣りからのイトウ釣りへの転向組であるから、川通しの釣りには慣れている。しかも釣り場が私と似て中小河川であるので、手ごわい好敵手になってきた。

 2007年のイトウの会は、会としての活動が不活発であったが、ホームページの更新作業はわりに順調に行ない、予想を超えるゲストのアクセスを得ることができた。掲示板に書き込んでくれる名手や常連さんたちが、ひんぱんにわれわれと交友できるのであれば、それは一大パワーとなるだろう。

 イトウの会といっても、そのメンバーは多彩であり、イトウ命みたいな生活を送る者から、イトウはしばらく写真でしか見ていない者までいろいろいる。技量も経験もデコボコであるから、会員のバランスがとれ、仲良くやることができる。元来、川の釣り師は一匹狼なのであるから、釣果を競うだけなら釣りの会など成立しないのだが、わがイトウの会には役割分担ができていて、和気あいあいとやっている。唯一の共通点は、毎日イトウの会ホームページを開いてみることだけだ。

 忘年会の夜は更け、おじさんたちはすっかりできあがり、Kさんもさくら色の上機嫌になって、「弟子入りしまーす」なんて言ったものだから、会長は恵比寿さまみたいな満面の笑顔になり、めでたくお開きとなった。