第86話 ルアー |
私はルアーでイトウを釣っている。以前はコータックの金スプーン18gが定番で、もっぱらこれで釣っていた。スプーンは種類が多く、どれでもよかったのだが、肉厚なところが気に入って愛用した。ところが、プラグが普及しはじめると、そのフォルムや動きがリアルで、明らかにスプーンより機能的であることを知った。とりわけシュガーディープやDDパニッシュのヒット率が全然ちがうことが分かったので、あっさりとこれらに乗り換えた。 その後は、プラグで竿をふっていたのだが、海アメを狙う人々が飛距離の出るジグミノーを使いはじめたので、ちょっとジグミノーに浮気をした。しかし私は海岸で竿をふるわけではなく、ジグミノーの扱いも下手くそだったので、目覚しい釣果を得ないままに終わった。 大河でメータークラスを狙うようになると、大物狙いの定番であるK-TENブルーオーシャンやMM13などに走った。キャスト時の飛距離が抜群のプラグで、フックも頑丈だったからだ。しかしルアーのサイズがちょっと大きいので、川のベイトフィッシュに似せたルアーほどは魚を魅了できないことが分かった。最近では、9p前後のプラグの腹フックを3号に付け替え強化して使用している。 色はどうするのか。私はヤマメカラーを愛用して、同型ならかならずそれを購入する。ディープであろうと、シャローであろうと、その中間であろうと、ヤマメカラーで失敗したことはない。イトウはヤマメが絶対の好物なのだ。 私は札幌へ行くと、たいていアメリカ屋漁具を訪れて、ルアーなどの消耗品を補充している。チライさんのように、大量箱買いすることはないが、自分が好きなルアーがあるとまとめ買いする。目新しいルアーに手をだすこともあるが、たいていは使わない終いで不良在庫となってしまう。 購入すると、まずプラグの腹のフックをより大きく、強度のあるものに交換する。ついでにスプリットリングごと取り替えることもある。フックは断固としてトリプルだ。それがいいとおもっているから。ちなみにイトウは50pを超えると、まず9割以上プラグをハーモニカのように腹側からくわえようとしてヒットする。これは私が統計的に実証できる事実だ。だから、腹のフックが大事なのであり、極端なはなし、尾のフックなどはなくてもよい。 私はイトウ釣りのデータの一部として、使用ルアーを記録している。釣れればずっとそのルアーを失くすまで使いつづける傾向があるので、一覧表にはずっと同じルアーが並ぶ。 この半月くらいは、sumari MD90Fをしつこく使っている。とりわけ真っ黒のバージョンが効果的だ。本波幸一名人が、「川が濁ると黒いルアーがいい。黒がなければ、手持ちのルアーを油性マジックで黒く塗りつぶすとよい」と言っていたが、確かにそのとおりだ。濁り水に黒という目立たない色を使うと、かえって魚は視認できなくなるような気がするが、現実はそうではないようだ。百戦錬磨の釣り師の言うことは、素直に聞くべきであろう。 ルアーはじつによくできた疑似餌である。フライみたいに作法がむずかしい道具ではなく、手にしたその日から実戦的に使えるのがいい。釣りは実釣できなければおもしろくない。最近のプラグは高価だが、失くさないで長期に使うことができれば、割安な道具である。立ちこみで使用すると、根がかりしてもまず回収できるので、いつまでたっても同じルアーを使用することになる。倒木流木のからみあうややこしい釣り場ならば、まず捨ててもいい安価なルアーをパイロット的に使ってみることをお勧めする。それで水中の様子を探るわけだ。パイロットにヒットすれば、それはそれでいうことはない。 最近ルアー釣りの人口が減少しているという記事を読んだ。これはちょっと寂しい現象だ。私は日々イトウ釣りにお世話になっているルアーに敬意をはらい、その普及に貢献したいとおもう。 |