339話 ルアーの殿堂

 

ルアー釣りの愛好者である私は、当たり前だがルアーも好きなのである。大物や印象深い魚を釣ったルアー、大切な友人からもらったルアー、希少な価値あるルアーなどは、殿堂入りして、もはや実釣に使うことはない。長い年月をかけて殿堂入りしたルアーは、30個ばかりである。

殿堂といっても、コルクボードに虫ピンなどで貼り付けているだけで、とくに手厚く保存しているわけではない。

殿堂で最大のお宝は、伝説のイトウ釣り名人・草島清作さんから頂いた「へら」と呼ばれる手作りスピナーである。もちろん、ご本人が製作されたものであろう。黄金色のスプーンには鉛が仕込まれ、トレブルフックとの連携は、赤糸でていねいに仕上げられている。試しに使ったことはないし、多分使わないだろうと思う。あまりに貴重なルアーで、ロストするリスクを取ることができない。草島さんは、13フィートのロッドを振りかざし、太鼓リールで「へら」を操り、尻別川の153㎝もの巨大オビラメ(尻別川のイトウ)を釣ったという。古き良き時代とはいえ、異次元の巨大魚である。

本波幸一さんの「マキリ」は、への字型のフォルムと、塗りの美しいウッドの完成されたプラグである。しかし、最初からこの定形ではなく、試作品には、もっと無骨な姿もあった。フックの重さは、糸錘で調整されていた。私は、彼に試作品をテストするように頼まれ、大河でよく使った。傷だらけになったが、無くすことはなく、いまは殿堂入りしている。本波さんは、「マレク」と名づけた肉厚のスプーンも作っている。私はまだ発売前にこれでイトウを釣ったので、マレクの先駆者ともいえるだろう。

嵯城要介さんからは、金色のスプーン「Chirai Special」をもらった。羽ばたくフクロウが彫られている。レストランのオーナーシェフでもある彼が、忙しいなかで巨大魚を釣っているのは、このアイテムなのかと思うと感慨深い。

釣り仲間でもあるF氏からもらったジョイントルアー「Fuji special」は、2か所の関節をもつルアーである。泳がせると、水面直下でなんとも魅惑的なくねくね泳ぎをして、道北でいえばヤツメウナギそっくりである。

このほかチライさんがくれたフライとルアーの折衷のような疑似餌、サトウ君のバルサを削って手作りしたプラグなどもある。

私は手先が不器用で、こうした小道具を作ることができない。せいぜい色を塗り替えたり、フックを交換したりするだけである。オフシーズンにこうした手仕事をして、実釣でオリジナルルアーを使えたら、どんなに快いか想像できる。

初メーターイトウを釣ったルアーは、K-TEN BLUE OCEAN である。これは、釣って即座に殿堂入りした。メーターイトウの口に掛かったルアーの写真を撮っておけばさらに良かったと思う。しかし、感激してそこまで思いが至らなかった。

一方BassdayのレンジバイブやSMITHDDPanishといった現役で使っているルアーは、殿堂入りしてはいない。いずれはコルクボードに貼り付けるだろう。

 殿堂入りしたルアーは、それぞれ1本ずつ固有のストーリーをもっている。手に取るとルアーが活躍したシーンや、いただいた人びとが鮮明に思い出される。私はいつまでルアー釣りができるか分からないが、できなくなっても、殿堂入りしたルアーたちは、至福の時間を与えてくれることは間違いない。