338話 2023年の統括

 

 イトウ釣りの成績を1994年から毎年まとめてきた。2023年はその30年目の節目である。釣りに関して、このように愚直な長期の記録は見たことがない。多分、ほかには存在しないだろう。

 30年間に釣ったイトウは2503匹という膨大な数になった。しかし、2021年夏の高水温によるイトウの大量死以後は、2152匹、2248匹、2331匹と急速にその数が減少した。この数は、自然界のイトウ資源の減少以外に、釣り師の私の高齢化による衰えにも起因している。

 川通しに長いルートを辿りながら釣るというかつての私の釣行スタイルが、車で移動してスポット的に釣るというスタイルに変わってしまった。年齢70歳を過ぎてから、前者が体力的に持たなくなったからだ。

 自然界のイトウの生息数も私の年毎の釣果と比例して増減していると推測している。ここ30年間で、いまが一番イトウは少なく、また大型魚も数を減らしていると考えている。

 2023年は体長でも平均体長が46.4㎝と減少した。80㎝と70㎝級が各1匹である。つまり釣果として、質量とも劇的に落ちた。奇しくも1994年の初心者のころとほとんど同じ釣果となった。原点回帰である。

 30年間の月別匹数は、6月が603匹と突出しているが、5月、7月、8月、9月はほぼ同じである。6月が釣れるのは、日照時間の長さ、水温の最適という好条件による。

時間をみると、5時から15時がなだらかな二山になって、7時と14時に頂上がある。これは私が釣りに出かけるタイミングの問題である。

 水温とイトウの釣果をみると、15℃が圧倒的に飛びぬけて、山の頂点を成している。これを、グラフにすると、富士山のようにコニーデ型の山になる。釣り人ならだれもが感じていた水温と釣果の関係が、可視的に表現できたものだ。

 天気とイトウの釣果では、曇が圧倒的に良く、ついで快晴、晴となる。雨でも釣れる。曇が釣りに最適なのは常識である。

イトウの川の釣果をみると、A川が圧倒的で、この川は川通しに隅から隅まで歩いた。B川、D川、N川はそれぞれ性格の異なる名川であるが、いずれも中小河川である。私は大河であまり釣りをしない。そのため巨大魚の釣果は少ない。大河で巨大魚の回遊を待つ釣りと、長い川ルートをたどる釣りとは、まったく釣法が異なる。それらは優劣を議論するようなものではなく、どちらもたいそう面白い。数が釣れるのは、移動の釣りであるが、大物に巡りあうことは期待できない。

 蛇足であるが、2023年に使用したルアーでは、レンジバイブ25匹、そのほかD-CONTACT、ひれ付バイブが良かった。

 フックでは、ルアーの腹フック(シングル)に最もヒットした。

 ラインはナイロン25ポンドオーバーを直結で使っている。

 稚内に赴任して35年。仕事以外の活動時間のほとんどを費やしてイトウを捜し歩いてきた。川で過ごした途方もない時間はもったいないが、それに見合うほどイトウはいたのだ。

いっぽう30年前には、エゾシカがいまほどいなかったので、鹿を目撃すると喜んで、撮影した。ヒグマも少なく、釣りで入った野山で遭遇することはなかった。それが、いまでは宗谷でも増えて、あちこちで目撃される。私も2年に一度くらいのペースでヒグマに出会う。そろそろ獣害を心配しなければならないほどだ。

 さて、これから釣り師としてどうするのか。とりあえずは、2024年も川に立って、イトウの泳ぐ環境を見届けたい。