328話 2022年の総括 

 

 2022年のイトウ釣りはどうなったのか。シーズンが終了して間もない今、振り返ってみる。

2022年の夏はほぼ例年通りの気温、水温で経過した宗谷で、イトウの死体を見ることはなかった。やはり2021年夏の猛暑は異常な現象だったかとひと安心した。しかし、下流の湿原を流れる川が、広範囲にわたって菱藻にびっしり覆われるという30年間も見たこともない光景が出現した。これは、川の水量の減少と、満潮時の逆流で、川がまるで湖にように長時間にわたり止水化したことによると考えている。この2年で、川はそれ以前と比べて、かなり変貌した。

前半の釣果は54匹、69匹、77匹とかなり苦戦したという印象だった。平均体長は48.0㎝であった。8月以後の後半はどうだったのか。結果を見れば、85匹、99匹、1011匹、113匹、計28匹で、平均体長は51.1㎝であった。例年よりすくないものの2021年同時期の19匹よりは9匹多く釣れた。これは、2022年の9月、10月はわりに雨に恵まれたということがある。シーズンを通じて全釣果は48匹、平均49.8㎝はまずは予想通りであった。

猛暑後の2年間は52匹(21年)、48匹(22年)であり、10年前後昔の12年~15年と比較すると釣果は約半減している。これはもちろん21年の大量死の影響が大きいが、釣り師の私の年齢的な衰えも考慮しなければならない。

 イトウの体長は、90㎝級がゼロ、80㎝級が1匹、70㎝級5匹、60㎝級7匹、50㎝級11匹、40㎝級11匹、30㎝級9匹、20㎝級4匹と全体的に小ぶりであった。おそらく猛暑の水温ではエネルギー代謝の大きな大物から先に死んだのである。この傾向は私だけではなく、釣り友たちのデータも同様で、90㎝級も減少し、100㎝以上の釣果は聞かなかった。相対的に小さな個体が多いのは、彼らが、大魚が入れない低水温の農業用水路で猛暑を生き延びたと考えている。この仮説が正しければ2023年には成長により相対的に大魚が増え、平均体長がアップするはずだ。期待したい。

 イトウの川についてはどうだったか。

A川は20匹(21年は13匹)、N川はゼロ(21年は7匹)であったが、合計すると同数である。元来この2河川は同水系であり、たまたまN川のイトウがA川に移動しただけかもしれない。N川になにか遡上に障害が生じたか。今後の調査に託したい。B川の11匹は3年間同数である。D川は16匹(21年は21匹)とやや減少した。C川は1匹であったが、釣行回数が極少なので、何とも言えない。イトウの大量死で、イトウ資源が壊滅的に減少したかと心配したが、幸いそうではなかったようだ。

 水温とイトウの釣果では、1411匹、156匹、164匹と全釣果48匹のうち44%はこの水温域で釣れた。水温15℃がイトウの活性度ではベストであることは変わりない。天気とイトウの釣果では曇が23匹で、全釣果の48%がこの気象条件で釣れた。

 宗谷の野生イトウの数の増減が、釣り師の釣果を調べることによって説明できるという仮説の下で、毎年調査してきた。2023年シーズンは30年目に当たる。同年に74歳になる釣り師の私がいつまでイトウ釣りができるかは分からないが、そろそろ引き際であろう。そういう意味で、23年は踏ん張りたい。