323話 情報 

 

2022年のイトウ釣りは、開幕からほぼ1カ月が過ぎた。ある程度予想はしていたが、私が通う宗谷の河川にイトウが少ない。過去の年間と比べても、釣れない。いったいどこに行けばいいのか。

 そんなとき、釣友であるF氏から、LINEが入った。ある出合から入ったところ、低温、渇水の悪条件にもかかわらず、まず41が来て、さらに80が出たという。そうか、あんなところに居たのか。私はその川にはめったに行かないが、行ったとしても深場ばかり攻めている。そうではなくて、瀬渕が繰り返し現れる渓流河川のような流域にイトウがとどまっているのだろうか。

 オホーツク海高気圧が張り出して、低温と東風が吹く鬱陶しい天気の日曜日、私はそこへ行ってみることにした。霧雨がそぼ降る小峠を越えて行ってみた。河川の源流の風景を見ると、多少は水量が増し、いくらか濁りも入っていた。釣り人の姿はない。気温4℃という4月並みの低温で、うすら寒い川中に入る意欲は湧かないのがふつうだ。

 まず最初のポイントでは、いきなり銀白の外道が来たが、どうもイトウはいないみたいだ。次のポイントは、ササが繁殖した薄気味悪い踏跡をたどって、川に入った。水温7.4℃、水位もそこそこで、茶色がかったとろりとしたいかにもイトウが好みそういな良い流れだった。「これならイトウが居るかもしれない」と胸が高鳴った。ウグイスが下手なさえずりで出迎えてくれた。ロッドをつなぎ、レンジバイブをセットして、投げた。出合、対岸の岸際、さらに上流側の深場と探るが、魚信はない。すこしずつ下流側に下り、さざ波のたつ瀬頭にルアーを投入して引いたところ、ピックアップ寸前に、ズシンと来た。首をふる。待ちに待った懐かしいイトウのアタリだ。まずまずの魚体を確認し、引きの手応えも楽しんで、タモ入れした。70㎝・3.2㎏の良型である。残念ながらGOPRO撮影はオンにしていなかったが、タモの中のイトウを動画撮影した。

 その後、好きな深場を2か所探ってみたが、居なかった。そこで、中流域の人工構造物のある区間をやってみることにした。まだ6月初旬で、岸辺の植物の繁茂はわずかだから、入川は容易だ。水温7.6℃、ウエーダーを通して感じる川の冷たさが、心地よい。目標ポイントに近づくと、ゆっくり、慎重に、静かにルアーを投入しては、スロースローで引いた。落ち込みの白泡下には居なかった。ルアーを替えて探っても音沙汰がない。そこでレンジバイブに戻し、遠目から、ダウンに遠投して底を探った。なんどかやってみると、いきなりグイと食った。柔らかい竿先が、グンと引き込まれ、合わせると水柱が立った。「お、やった!」あとは引き寄せ、タモ入れするだけだ。どんなに大きな魚であっても、7号ナイロンなのでラインブレークだけはない。上流側に逃走を図ったイトウも、強引に引き戻してタモに収めた。さきほどよりやや小さい66㎝だが、体重はおなじ3.2㎏であった。

こんどはGOPRO撮影が廻っていたので、あとでゆっくり楽しみたい。

 まだまだ時間はあったのだが、イトウを2匹釣ったことで、すっかり満足していた。車に戻って、もう引き上げることにした。気温は相変わらず6℃と低いが、ときおりやわらかな日差しも得られて、あたたかな気持ちになった。釣り場情報を送ってくれたF氏に写真付きの御礼LINEを送った。