319話 2021年のイトウ釣り 

 

 2021年のイトウ釣りを総括しようとしている。しかしこの年には、想定外の気象の変化と、私自身の加齢現象が発生して、以前とはまったく異なる状況になったことを考慮に入れなければならない。

 それにしても激動の年であった。丑年で、私は年男であった。本来なら少しばかり良い年になるはずであった。ところが、前年に引き続いてコロナ禍に翻弄された。老母が92歳で他界した。釣りにでて、3回もケガをした。イトウの大量死を目撃することになった。まだまだある。まったく厄年であった。

 2021年の月別匹数をみると、510匹、612匹、711匹は前年とそんなに変わらない数が出た。ところが、7月下旬から水温が異常に上昇し、729日には早朝の最低水温時でさえ25.7℃もあった。おそらく、日中には水温30℃を超えたところもあったはずだ。そして、731日にはいつもの川で、4匹にイトウの死骸を発見した。しばらく釣りを中止し、その後8月は4匹、9月は6匹を確認した。正直言って、イトウが生きていて嬉しかった。もしかして全滅かと心配したのだ。10月はすでに平水温に戻っていたが、9匹釣った。これは例年どおりである。

 イトウを釣った河川は4本であった。かつてはドル箱河川であったA川の魚影は薄く、とくに大量死のあとは、どこを探してもイトウはおらず、たった1匹下流でヒットしただけであった。一方で、他の3河川はそれほど激減したわけではなかった。B川、D川、N川は標高を同じとすれば、A川より2℃ほど水温が低い傾向にある。

流域が長く、蛇行して流速が遅く、水温が上昇しやすいA川では、イトウが壊滅的に死んだと想像する。これはあくまで想像の域を出ないが、イトウが大量死したのは、海の潮汐の影響を受けない上中流域のイトウで、渇水のためもたもたしているうちに取り残され、逃げ場を失ったのではないか。潮汐により河川の逆流が生じる下流域のイトウは、高水温で動きが取れなくなる前に最下流もしくは海に降りて命をつないだのではないか。

一方ことしイトウが釣れなかった原因のひとつは、カワウの異常繁殖である。近年徐々に増加したカワウは、いまでは、どの流域にも出没し、大量に川に浮かんで潜水を繰り返して魚を追いかけている。当然ながらイトウのポイントにも必ず出没し、それだけで魚をおびえさせている。カワウをなんとか減らさない限り、イトウをはじめ川魚は相当数減少するであろう。できればカワウのコロニーに操作して生息数を減らしたいものだ。

イトウ釣果と、天気あるいは水温との関係をみると、ことしは、雨の中で釣ったのがたった1匹であり、水温20以上で釣ったのが9匹と多かった。少雨、高水温であったことがわかる。

異常高水温の夏が去ると、秋の水温は平年なみに落ち着いた。イトウはそう簡単には釣れないほど減ったが、海から遡上したアメマスは、よく釣れた。体長も5060㎝の良型であった。

イトウの体長の分布、平均体長は例年とさほど変わりがない。イトウを釣った時間をみると、2018年ころから午後の釣果が激減している。これは、週末の朝から釣りをすると、釣り師・私の体がもたなくなった加齢現象のあらわれである。

2021年は私のイトウ釣りに関していえば、大きなターニングポイントとなった。2022年のことし、雪解けの季節になると、遡上産卵するイトウの姿を追うことになるが、おそらくその数は大きく減るに違いない。その現実を確認して、釣り師としての方向も決めなければならない。