第308話 2020年のイトウ釣り |
|
2020年当初はコロナ禍の下で、落ち着いてイトウ釣りを楽しむことが無理なのではないかと考えたこともあった。実際に道外から来る釣り師にとっては、県をまたぐ移動の自粛など政府の指針で、宗谷に来ることが難しい時期もあった。一方、地元民のわれわれは、誰とも接触することなく釣り場に行けるわけで、感染の心配はなく川に通うことができた。 しかし71歳になった私は、ずっとやってきた原野歩きや川中を遡行する釣りのスタイルを維持することが体力的に困難になった。仕方なく釣りのスタイルを変え、車でスポットを渡り歩く方式がほとんどとなった。当然ながら釣果は落ちた。 2020年の月別釣果では、5月15匹、6月13匹、7月13匹、8月10匹、9月15匹、10月6匹、11月3匹であった。5月のスタートは悪くなかったが、例年の稼ぎ月である6月は良くなかった。当てにしていた河川が不漁だったからだ。7月8月の夏イトウも不発ぎみであった。秋の声をきく8月末から9月が今年のハイライトで、型も大きくなり、10月の秋の陣に期待が高まった。しかし10月、11月は尻すぼみの減衰傾向となり、冬となってしまった。 2020年のイトウ釣果は75匹で、2019年より10匹も減ってしまった。だが運動量が減った現在の私にはこれくらいが限界であろう。平均体長は54.7㎝で、例年とさほど変わらない。90㎝級が3匹、80㎝級が3匹で、まあこんなものかと思うが、100㎝オーバーは、一度もヒットしたことさえなかった。大雨増水時に特定の場所を集中して探るとか、下流域でしつこく回遊を待つといった工夫が必要であろう。 釣れた時間帯は、午前中がよいが、午後も釣れないわけではなかった。朝に釣り師の気合が入っていることも釣果に大いに影響する。 水温は13℃から17℃が圧倒的によく、15℃にピークがある。別に6月に限らず、このあたりの水温であれば、何月であっても良く釣れる。この傾向は、毎年変わりがない。 天気は曇と快晴で30匹ずつ釣った。曇が圧倒的に良いわけではなかった。しかし快晴が長くつづくと水温が上昇するので良くない。 河川では、大きく傾向が変わった。主として竿を振ったのは4河川であった。私がずっと一番のドル箱河川としてきた中河川が、2020年は非常に悪く、イトウの居つきが少なかった。おまけに9月の大雨増水時に好釣り場のマウンドが流されてしまうというアクシデントがあった。そのため別の河川に依存することになり、探索の成果もあって、トップ河川が交代した。一般的にあまり魚影が濃くないという評判の河川ではあるが、時と場所を選べば魚影が非常に濃いこともあった。 釣り人の一番の関心事は、どの川でいつ釣るかということだろう。これはイトウ資源の保護のため開示できない。だがイトウが良く釣れるということは、そこに餌魚が集まるという不文律があるわけで、これはどの川にも当てはまる。産卵のために海から遡上する小魚、大雨時に流されてくる稚魚はイトウの大好物なのである。 2020年のイトウ釣りでの最大の出来事はヒグマとの遭遇であった。最近はヒグマの出没情報が増えている。下流部の開けた場所を除けば、イトウの好釣り場はすべてヒグマの生息域である。したがって、独自の釣り場開拓を試みるときは、羆よけスプレーが必携となることを忘れてはいけない。 |