281話 釣り雑誌 


 冬場の楽しみのひとつに釣り雑誌をじっくり読むことがある。しかし最近では活字を読む人が減って、釣り雑誌がどんどん休刊や廃刊に追い込まれたり、月刊から季刊に縮小したりしてたいへん寂しい。雑誌の衰退の原因は、日本人が活字離れしたこと、豊富なネット情報、テレビの釣り番組も挙げられるであろう。

長い間愛読した「北海道のつり」が2017年に予告なしに突然廃刊になった。グラビア写真が美しい「Flyfisher」も季刊になった。いま定期的に読んでいるのは、「North Angler’」、「鱒の森」、「Fishing Café」それにときどき「Gijie」くらいである。休刊廃刊になると悲しいので、微力ながらこれらは継続して購入している。

道内を取材フィールドにしている「North Angler’」はもとより、最近は全国誌でも北海道をよく取り扱う。それだけ道内の釣りが人気を博しているのだ。トラウトでいえば北海道の川魚はサイズが大きく、漁協管理が少なく禁漁期間がないというのは大きな魅力だろう。

釣り雑誌が取り上げる北海道の魚種といえば、なんといってもサケ、サクラマス、ニジマスが御三家だ。(海の魚はべつとして)これらにヤマメ、アメマス、イワナがつづく。2017年北海道では、日本海側を除き、サケが不漁だった。それでも私が竿をふる川には、かなりのサケが遡上して、イトウ釣りのジャマをしてくれた。

イトウ釣りに関していえば、各雑誌は年に1回くらいイトウを大きく扱う。なぜか地元以外の釣り師が登場して、メーター前後くらいのイトウを釣って見せている。私や私の仲間が竿をふる川は雑誌に登場することはまずないので、安心している。

イトウは道外のトラウトファンにとっては、一生に一度は釣ってみたい夢の魚だという。そのためか天然イトウを扱うと、釣り雑誌は売れる。イトウが絶滅危惧種のためイトウ釣りを誌上から追放した雑誌も、まもなく復活させた。背に腹は代えられないようだ。

釣り雑誌に望むことといえば、やはりすでに誰もが知っているような大場所で、オーソドックスな釣法で釣って見せることである。地元の愛好者が大事にしている無名の場所は避けてほしい。雑誌の影響力はいまでも大きく、穴場を紹介されると、そこにドッと大勢の釣り人が殺到するからである。しかしまったく新情報がなければ雑誌は売れないだろうから、多少はヒント程度の情報は流すのがよかろう。

最近では釣具店が有料でカタログを出している。「Casket」はA4判で、写真が美しく、釣行記事も充実して読みごたえがある。ページをめくるとわくわくして、ついつい釣具も買ってしまいそうだ。

釣り雑誌と同様に釣りの単行本も売れていないようだ。かつては開高健という絶大な人気の作家がいたから、読者は彼の釣行作品を待ち望んだが、いまは彼の代わりになる作家がいない。釣行記でなおかつ文学の輝きを放つようなレベルの高い作品をだれかに書いてほしいものだ。