274話 2017年の出足  


 20175月の第2週からイトウ釣りを開始した。日本海側河川のイトウ産卵が終了し、河川が雪代増水から平常水位に回復したからだ。この日に備えて、朝3時起床、即ランニング、そして4時から活動するという日課を続けてきたから、心身ともにすぐに順応した。初日は雨降りだったが、特別の気負いもなく普通に川辺に立ち、11フィート竿の感触を確かめながら、1時間ほど釣りをした。すこしずつ釣りの感覚が甦ってくる。釣りベストの各ポケットに何が入っているかも思いだした。シーズンが開幕してしみじみ楽しいなあと感じた。

 今季初のイトウがヒットしたのは2日目だった。南西風が吹いて川がうねる悪条件であったが、粘っていると軽い魚信があって、第140㎝が上がってきた。これで片目が明いた。けっこううれしい。

 河川情報の水位を日になんども確認する季節となった。水位を見て、立ち込み釣りにちょうど適した釣り場があることに気付いた。夕方ストッキングウエーダーを履いて小河川の合流点に立ち込んだ。下流への3投目でドスンと出た。まだうっすらと婚姻色の残る67㎝で3.3㎏であった。これで両目が明いた。とおもったら、すぐ直後にまた来て69㎝・3.1㎏であった。一気に調子が上がってきた。

 イトウの会ホームリバーには毎朝立つことにしている。その日も4時すぎにはキャストを開始した。河川にはシラウオの群れが遡上しているらしく、ルアーのフックにときおり半透明の7㎝ほどのシラウオが引っかかる。これでイトウが近くにいることは間違いない。と思ったら案の定、リーリングに強い抵抗があり、無意識に合わせを入れると魚が乗った。なにしろタックルが強靭なので、ファイトに遠慮は要らない。強引に寄せてタモ入れした。第4号は72㎝・3.4㎏であった。

 次の日も早朝に定点釣りをした。東の風が吹き、気温はなんと3℃と寒い。5月も中旬というのに、宗谷のこの気候は冬のようだ。ネックウオーマーと手袋は欠かせない。それでも水温は8℃台なので、イトウは寒くはあるまい。上流に第1投し、ついで下流に2投目を放つとすぐに食いついた。第5号は67㎝・3.2㎏であった。

 日曜日の朝は、東風が10メートルも吹いて川にはさざ波が立ち、風上に顔を向けるのはちょっとつらいくらいだった。見渡す限り釣り人の姿はない。あちこち風よけになる釣り場を渡りあるいたが、不発だった。そこで「俺の釣り場」と名付けたとっておきの場所に進入した。濃いササヤブを突っ切っていくので、ほとんど他の釣り師は入らない。まだ樹木が伸びていないので、河畔の見通しがすこぶる良い。いちおうヒグマ対策の鈴とスプレーは持っていった。

 河畔の広場で、道具のセッティングをやり風景を写真に収めた。この日はなぜか青空に飛行機雲が何本も走った。中国機に対するスクランブルなのだろうか。

 広場で水温は12.5℃、水位は最適で、透明度もベストだ。「来る」予感がした。バイブレーションをビューンと遠投し、十分沈めてから引いた。川底を意識して探ると、ガツンと鋭角的な魚信が来た。鏡水面を切り裂いて68㎝・2.6㎏が出現した。さらに58㎝・2.0㎏のおまけも付いた。

 こうして今季のイトウ釣りを始めて、ちょうど1週間で7匹のイトウを釣りあげた。シーズン開幕直後なら11匹のペースは悪くない。ことしもよい釣りをしたいものだ。