第199話 2012年の年賀状 |
年賀状は送ってももらってもうれしいものだ。とりわけ同好の士である人びとの年賀状を手にすると、しみじみと幸福感が湧く。 私は写真付の年賀状が好きだ。しかも家族や小さな子どもやペットではなく、本人がしっかり写っているのがいい。それだけで、その人の現状が一目瞭然となる。私が見たいのは、その人の家族ではなく、当たり前だが本人なのだ。私は以前には、年賀状には南極の景色を絵葉書にして送っていたが、20年ほど前から、イトウと私自身に換えた。ほとんどが抱っこ写真である。しかも前年に釣ったものに限定している。そうしたら私の年賀状を完全保存版にして残してくれる人が現れた。気をよくしてその後はずっと同様の年賀状に専念している。 「メーターを超えてはじめてイトウという。メーターに満たないものはピンコといった」これは草島名人の言葉である。草島流でいえば、私はまだイトウは2匹しか釣ったことがないことになる。しかし、ことしはひさしぶりに正真正銘の100p・9.7kgのイトウを抱いた写真年賀状をみなさんに届けることができた。札幌のテムズを正月明けに訪れると、私の年賀状も他の釣り人の年賀状とともに店に飾られていた。魚のサイズに見劣りがしなくてよかった。 イトウ釣り仲間のうち、4人から年賀状が届いた。チライさん、Fujiさん、torakoさん、チライアパッポさんである。4人は去年全員がそろってメーターイトウを釣り上げたことからも、その力量の充実ぶりがうかがえる。 Fujiさんは得意のイラストでイトウを描いている。あれが104p・10.3kgの魚なのだろうか。チライさんは、家族の組み写真のなかにさりげなく110p・13kgというおそるべきイトウの抱っこ写真を組み込んでいる。torakoさんも102p・10.4kgを誇らしげに抱っこしている。チライアパッポさんは、初冬の雪景色のなかでびっくりするほどのメタボなイトウ104pをかかえ、ほとんど恍惚の表情を見せている。各人が去年はいいシーズンを送ったようだ。 私がイトウを通して親しくお付合いさせてもらっている著名人からも自筆の年賀状をいただいた。20歳年上のイトウ釣り名人・草島清作さん、10歳年上の漫画家・矢口高雄さん、2歳年下の俳優・大地康雄さんである。みなさんそれぞれお元気でなによりだ。 草島名人には、私と阿部幹雄の釣り番組「フィッシングカフェ イトウのサンクチュアリを守る」の冒頭部分に大先達として登場してもらった。矢口さんには、「釣りキチ三平 CLASSIC」の巻頭対談に招いてもらった。大地さんのテレビドキュメンタリー「大地康雄の北海道四季物語」にはイトウ釣りの案内人として出演させてもらった。これらはいずれも身に余る光栄であった。その後も、なんどか面会したり、年賀状を交換したりして、交流をさせてもらっている。すべてイトウのおかげである。 私はたいていの仕事の文書はコンピュータで作成して、サインだけ肉筆にしている。しかし、年賀状だけは、宛名から文章まで肉筆できちんと書いている。自分がもらったときうれしく思うからだ。年に一度だけでも、労力をかけて通信をすることが、相手との絆である。だから、宛名から文面まですべて年賀状ソフトを使った印刷で、なおかつ私の住所や氏名まで誤りがあるような年賀状は、ほとんど読むこともない。 年賀状はオフシーズンでもっともうれしい希望の灯である。来季もいい年賀状を作れるように頑張ろうとおもう。 |