173話  2010年忘年会


 最近ではイトウの会の忘年会を11月にやっている。その理由は、12月になると会員それぞれの職場の忘年会で忙しくなり、なかなか一同に会することができないからだ。11月なら遠くから会友が最後の釣行を兼ねて来てくれるにも都合がいい。

 2010年は、飛び石連休の谷間にあたる1122日に、南稚内オレンジ通に面した串姫煮太郎で忘年会を開催した。店の奥に小部屋があって宴会には具合がいい。集まった会員は8人、いっぽう来てくれた会友は5人に及んだ。毎年毎年、着実に仲間の数は増えている。

イトウの会発足時のメンバーは、川村、加藤、谷、大村と高木の5人で、全員が市立稚内病院の職員だったのだが、いまは外部にも仲間がいて、それぞれが大きな釣果をあげている。今回来た会友のなかには、一年でメーターイトウを2匹も釣った人、私よりもはるかに多い数を釣った人、フライマンの兄弟など実力派がいることがうれしかった。

一方、イトウの会の女性会員も転勤先から仕事をからめて来てくれた。若い女性がいると、座は華やかになってよろしいが、なぜか泥酔者が出現することが不思議だ。

最初の乾杯はビールであったが、すぐに会員のひとりが沖縄から持ち帰った泡盛43度が出た。まろやかな風味で口当たりがよかったが、さすがにアルコール度数が高くよく効いた。この2本が空になると、辛口の清酒が来た。とめどなくぐんぐん勢いがついていく。

顕著な釣果をあげた人物から報告がある。佐藤は冬のオフに自作したミノーで90オーバーのイトウを連発した。私など手先の不器用な釣り師には夢のような成果である。

谷は今期たった1回の釣行で、89pをあげた。イトウはあまりに常軌を逸したルアーの動きにたまらず食いついたのかもしれない。

大村はとある川でたびたび会うが、イトウを釣ったところは一度も見たことがない。聞くところによると、海でソイ釣りをやらせたら上手いとか。

加藤はフライでイトウを釣り、海でカラフトマスを大釣りしたという。彼はなぜかフローターが好きで、立派なのを持っている。湖の真ん中まで漕ぎ出せるそうだ。

メーターイトウを2匹釣った人物は、思えば、私とよく川でかち合う。彼の車は入ろうとおもっていたポイントの駐車スペースによく見る車だった。「なーんだ、そうか」と納得したが、私には同じポイントに一日粘る根性はないので、やっぱりメーターは無理か。

私より多くのイトウを釣る人は、当然ながら私と同じような立ちこみ釣行をしていて、しかも若くて元気がいいので、太刀打ちできない。お互いにどこでやっているとは言わないのだが、だいたい分かるものだ。

フライマンの兄弟は、遠路はるばる宗谷にやってきて、地元民好みの釣り場で鮮やかな釣果を見せてくれた。その集中力はみごとである。

イトウの会の会員は、病院内で顔を合わせるほかは、年に3回ほどの宴会とホームページを毎日見ることでつながっている。釣りには、単独か、気の合う同志ででかけるが、大挙して行くことはない。大物が掛かると、携帯で伝えて、近くにいる誰かに抱っこ写真を撮ってもらったりしている。釣りクラブといっても、会員それぞれ目標や熱中度が異なるので、競い合うことはない。

川村が、会員個々の釣果を写真展示しようと提案した。毎年私がやっているイトウ写真展の終了後、こんどはイトウの会の写真展となる。

忘年会がお開きになったのは23時を過ぎていた。毎朝4時台には起きる習慣の私は、二次会に行く余力はなく、そのまま帰宅した。若い連中は三々五々夜更けの街に散っていったようである。