127話  2008年シーズン総括


 イトウ釣りを終える時期がやってきた。5月から12月まで8ヶ月も楽しませてもらったことをイトウの神さまに感謝しなければならない。とりわけ本州の河川ならとっくに禁漁になっている秋に、存分に竿を振れる醍醐味は、北海道ならではのものである。 2008年はわるくないシーズンであった。

5月7匹、6月23匹、7月13匹はほぼ予定どおりの釣果だったが、8月の真夏に22匹は想定外のうれしい釣果であった。本州以南の日本列島は酷夏であったにもかかわらず、宗谷では真夏の減水、水温上昇もわずかで、モップ状の藻の繁殖も少なかったのが好調の原因だった。9月も14匹と調子は落ちなかった。例年ならかならず襲う秋の長雨もなかった。私はいつも竿を振る複数のホームリバーを渡り歩き、着実にイトウを釣り重ねた。10月は11匹と無難な数で乗り切った。このあと11月と12月で10匹を釣ったなら年間百匹に届いたのだが、残念ながら晩秋に急ブレーキがかかってしまった。釣果は11月に2匹と12月に1匹の計3匹だった。

12月下旬の土日、私はこの二日間にも川へ出陣して、最後の挑戦を試みる予定にしていた。しかし当日はあいにくの暴風雪が荒れ狂い、釣りなど問題外の状況になってしまった。くやしいが、もう釣りはあきらめるしかなかった。

2008年のシーズンが良かった理由はいくつかある。まず、私のイトウの釣果が合計93匹、平均54.2p、最大魚90p、8.2kgと納得のいく数字が達成できたことだ。93匹というのは、釣り師全盛期の数字で、もうひと息で100匹の大台に乗りそうな数字であった。

体長を考察すると、90p級1匹、80p級5匹は例年通りの結果で、70p級17匹は過去最多である。60p級18匹、50p級14匹、40p級18匹は例年並みである。その一方で、30p級10匹、20p級10匹、10p級0匹と小さいサイズがやや少なかった。おそらく、それぞれの当歳魚の産卵、孵化、成長の状況があまり芳しくなかった可能性がある。小さいサイズがどんどん減っていくと再生産に黄信号が点灯するとみる。

しかし、1994年から2008年の15年間で年平均83匹の釣果があり、2005年65匹、2006年58匹といちじ減少したが、2007年83匹、2008年93匹と再び増加したことは、資源の復活を示唆している。これらをみて、宗谷のイトウは減っていないと私は考えている。

つぎにイトウの会の状況でうれしいのは、会員が増えたことである。会長以下オリジナルメンバーの5人は、着実に高齢化しているが、新たな3人は20歳台2人と30歳台1人と若い。彼らの若さが無限の可能性をもっている。会員はいずれもイトウ研究者でもなく、プロの釣り師でもないふつうの職業人である。われわれがイトウに深い興味をもち、産卵観察、釣り、河川の観察、写真撮影などを通して、宗谷の自然を見守りつづけていることは意義がある。私は、イトウの会の活動を逐一宣伝してはいないが、会友の写真家阿部幹雄とともに、イトウの生息環境の保全に役立つ情報を送り続けている。その地道な活動で、産卵環境が回復した河川もある。

さらに研究者の方がたから宗谷での調査協力を依頼されるほど会が認知されたことはうれしい。これは、イトウの会が机上の議論に終始していない現場主義の会であることの証でもある。われわれは、宗谷のイトウのことを知っていると自負している。われわれはわれわれ自身が蓄積したデータに基づき、イトウに関して意見をのべる。他人のふんどしで相撲をとらない。

イトウの会ホームページのアクセス回数が20万回を超え、その後も増え続けていることは非常にありがたい。ホームページはイトウ愛好者の支持を得ていると理解している。ゲストのほとんどは釣り師であろうが、支持を受けている理由は、おそらくわれわれの情報がイトウ釣りにいくらか役立っているからであろう。イトウの会ホームページは、愛好者の庭でありサロンである。これからも気軽なご訪問を期待している。